岡野昭仁(ポルノグラフィティ)“歌を抱えて、歩いていく” プロジェクト特設サイト

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岡野昭仁 配信LIVE2021
「DISPATCHERS」LIVE REPORT

「歌に連れてきてもらったこの道を ここからは、歌を抱えて歩きたいと思う」そんな大きな決意を胸に新たなプロジェクトを本格始動させた岡野昭仁が4月11日、ソロとして初となる配信ライヴ「DISPATCHERS」を開催した。

配信開始時刻を過ぎると、モニターにはアコギを抱えて椅子に座る昭仁の姿が映し出された。1曲目は「ROLL」。ギターのボディを叩いて作ったビートや、ギターフレーズ、コーラスをルーパーでサンプリングし、それをループさせながら生のギターと歌を重ねていく。自ら奏でた音だけで生まれるセッションによって、よりパーソナルでリラックスした歌声が響いていく。同時に、言葉の輪郭を極限まで際立たせ、真っ直ぐに聴き手の心を突き刺してくるボーカルの魅力もあらためて感じさせてくれた。「『DISPATCHERS』、始まりました! 今回の配信ライヴは非常にチャレンジングな内容なので、終えた後にはいろんな成果を得られるんじゃないかという気持ちで頑張りたいと思います。楽しんでいってください」

そんなMCに続き、「Zombies are standing out」を。冒頭、ほぼアカペラな状態で歌われたサビに溢れていたブルージーな表現にはこれまでに聴いたことのないニュアンスを感じた。ボーカリストとしての新たな引き出しが次々と開かれていく――それこそがこのソロプロジェクト最大の醍醐味なのだろう。ライヴで演奏されるのはかなり久々となる「愛なき…」では、どこかコロナ禍の状況にもフィットするような歌詞の世界観を、今の昭仁が繊細に歌い紡いでいく。ビートに縛られることのない弾き語りというスタイルだからこそ、自身の呼吸感で生み出されるグルーブがとても心地いい。

オープニングからポルノ楽曲を3連続で届けた後は、日本の音楽史を探訪すべく、ポルノライヴでバンマスを務めるtasukuをギタリストとしてフィーチャーしながら様々なアーティストのカバー曲を披露していく。ラジオ番組を通して親交を深めた井口理有するKing Gnuの「白日」や藤井風の「優しさ」では、tasukuプロデュースによるバックトラックに合わせて原曲とはまた違った、昭仁にしか生み出し得ない圧倒的な魅力を放っていく。「新世代のどえらい才能」とKing Gnuと藤井風の2組をリスペクトしながらも、昭仁の歌声にはキャリア20年以上のボーカリストとしての揺らぎなき矜持が滲んでいた。

昭仁のアコギとtasukuのエレキギターだけのシンプルなサウンドで山崎まさよしの「One more time,One more chance」をせつなくカバーすると、画面はそれまでの東京キネマ倶楽部から屋外へ移動。満開の桜の木の下でスピッツの「空も飛べるはず」を、青々とした葉の茂る緑の中でポルノグラフィティの「Aokage」を歌う。陽の光を浴びながら弾き語りをする昭仁の歌声が自然の中に柔らかく溶け込んでいく。

続いては渋谷の夜景が見える場所へ。様々なシチュエーションで歌が届けられていくのは、配信ライヴならではの見せ方のひとつとして楽しいものでもある。ここでは、浜田省吾率い、昭仁もボーカルとして参加したるFairlifeの「旅せよ若人」が、新生活をスタートさせたすべての人たちに向けたエールとして高らかに届けられた。そしてもう1曲。「ワインレッドの心」では、原曲を歌う玉置浩二のボーカルに負けないほどの熱量を放つ、圧倒的な迫力を感じさせる歌を響かせてくれた。

再び映像がキネマ倶楽部へ戻り、ここからは女性シンガーの楽曲を次々とカバーしていく。ヨルシカの「だから僕は音楽を辞めた」の早口で畳みかけるボーカリゼーションは昭仁の特性にとてもマッチしているように感じた。アコギをガシガシとかき鳴らしながら歌う姿がとにかくかっこいい。椎名林檎「丸の内サディスティック」では、随所に巻き舌を織り交ぜることで原曲に寄り添いながらも、原曲とはまったく異なる印象を聴き手へ与えてくれる。アウトロのスキャットにシビれた。昭仁とシティポップの相性の良さを感じさせてくれたのは、松原みきの「真夜中のドア~Sstay Wwith Mme」。元々、アタックの強さが武器のボーカリストではあるが、楽曲のスタイルによって柔軟に、変幻自在の表現を生み出すことができることをあらためて証明してくれていたように思う。そして、音楽シーンに燦然と輝く名曲中の名曲として周囲からカバーのリクエストも多かったというDREAMS COME TRUEの「未来予想図Ⅱ」では、あたたかな愛の物語を感情たっぷりに歌唱。大きな感動を届けてくれた。

たくさんのカバー曲を届けてくれた後は、キネマ倶楽部のフロアに立ち、新曲「Shaft of Light」を初披露。辻村有記とともに半年以上の時間をかけて作り上げられたというこの曲は、海外のトレンドを意識したエレクトロなナンバー。昭仁自身も言っていたように、ポルノとは明らかに違った革新的なサウンドスケープは、ボーカリストとしての新たな魅力を引き出してくれるものであり、同時に今後のソロ活動においての重要な指針になっていくはずだ。「ソロプロジェクトでやったことはしっかりとポルノグラフィティに還元したいと思うので楽しみにしていただきたいですね。好き勝手やってる僕を許してくれてる新藤晴一にも感謝。ありがとうございます。では最後の曲です。この配信ライヴブにかかわってくださったみなさんに、光あれ。そんな気持ちで歌います」

ラストナンバーは、歌を抱えて、歩いていくプロジェクトの始まりの曲「光あれ」。ミラーボールによる光の粒が美しくまばゆい景色を描き出す中、強い意志を込めた芯のある歌声が響き渡り、ライヴはエンディングを迎えた。

新プロジェクトの勢いを加速させ、ファンの期待をさらに大きく膨らませることとなった配信ライヴを経て、昭仁は早くも次なる動きをアナウンスしてくれた。7月2日公開の映画「劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち」の主題歌として「その先の光へ」という楽曲を提供しているのだという。これまで発表されてきたソロ楽曲はすべて“光”がひとつのテーマになっているようでもある。歌を抱えて歩いていく決意を新たにした昭仁が、その自らの歌をもって見せてくれる様々な光。その光が導く先にはきっと、圧倒的に幸せな未来が待ち構えているはずだ。

文 / もりひでゆき

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